[1960 サンテック] 豊富な純資産と積極的な株主還元

1960 サンテック

(※6777 santecとは異なることに注意)

 

(平成28年8月7日現在)

1960 サンテック

株価:608円

時価総額:121.6億円

株式価値:1,075~1,334円

期待投資収益:+77%~119%

投資判断:Buy

 

買い推奨のポイント

・時価総額を大きく上回る純資産

・直近3年は好業績、来期も好業績予想

・積極的な自己株式買い付け、増配

・中期事業計画において政策保有株式の売却意向あり

・中期事業計画において株主還元率100%目標

 

 

サンテックは東京都に本社を置く、独立系電気工事会社の大手です。電力、民間、公共の各分野に展開し、東南アジアを中心に海外進出も行っています。近年は国内建設需要の増加に伴い売上・利益共に高水準を維持し、また豊富な現金・有価証券・投資不動産を持つ高財務企業です。自己株式の買い付け・増配も積極的に行い、中期事業計画では株主還元率100%を目標としています。

執筆時点における株価は608円、時価総額は121.6億円ですが、これはサンテックの株式価値及び企業価値に対して大幅に割安であり、高い投資収益が期待されます。

 

この会社を評価するにあたって、3つに分けて考える必要があります。

  1. 非事業用の金融資産の価値
  2. 本業の事業価値
  3. 投資不動産の価値

 

それぞれ分解して価値を評価し、3つを合わせたものから総負債を控除した値が企業価値となります。

 

企業価値 = ①金融資産 + ②事業価値 + ③投資不動産 - 総負債

 

■①非事業用の金融資産の価値

はじめに、金融資産の価値について評価します。

平成28年8月5日に発表された第1四半期決算短信を引用します。

1960table1

現預金、受取手形等、有価証券については事業資産とは別に考えます。これらの非事業用資産をここでは金融資産と呼び、その合計値は283億円、さらに貸倒引当金の合計18億円を控除すると、265億円となります。

1960table2

負債合計は135億円であるため、金融資産265億円から負債合計を控除すると130億円となります。これをここでは現金清算価値と呼びます。(現金清算価値=金融資産-総負債)

ここで述べる現金清算価値とは全資産から事業用資産を除いて残った金融資産から総負債を控除した価値のことです。手持ちの現預金と現金に近い資産を用いて全ての負債を返済した時に残る資産であり、一般的な清算価値よりも保守的な数値です。

サンテックの場合、265億円の金融資産を用いて全ての負債135億円を返済してもまだ130億残ります。これに対し時価総額の121億円と10%小さくなっており、この時点で異常な割安であることがわかります。1万円札を9千円で買うようなものです。

 

■②本業の事業価値

続いて本業の事業価値を評価します。

本業に係る資産ですが、これは総資産424億円より先ほど計算した金融資産265億円と投資不動産42億円を除いた117億円となります。

 

ここで前期の損益計算書を分析します。

平成28年6月27日に発表された第69期有価証券報告書を引用します。

1960table3

経常利益のうち、受取利息15百万円・受取配当金76百万円は非事業用資産である金融資産に含めた有価証券から生じるものであるので、ここでは控除して計算します。

また受取地代家賃305百万円と不動産賃貸費用138百万円は、投資不動産から生じた収入と費用であるので、これも除外して考えます。

 

上記を踏まえて調整した直近期の修正経常利益は14.2億円となります。

同様に過去10期分を再計算すると以下のようになります。

 

事業年度 売上高[百万円] 修正経常利益[百万円] 対売上税引き前利益率
H28.3 44,782 1,164 2.6%
H27.3 40,319 1,375 3.4%
H26.3 38,019 1,727 4.5%
H25.3 33,126 552 1.7%
H24.3 29,846 -645 -2.2%
H23.3 28,081 164 0.6%
H22.3 29,379 194 0.7%
H21.3 34,377 365 1.1%
H20.3 34,424 117 0.3%
H19.3 31,269 628 2.0%

 

将来の事業推移がどのようになるかを想定することは非常に難しいです。主観が入らざるを得ない部分であり、どのように想定するかで企業価値が大きく変化します。ここで要されるのは常識的に考えるということです。数字だけを見て直線的な上昇や下落を想定したり、自身の仮説に合うような解釈をしたりして自己納得するのではなく、事業内容や経済動向から常識的に判断するということです。そして投資家としては出来るだけ保守的に捉えるべきです。(都合の良い解釈をして価値を高く評価するのはセルサイドの証券会社の仕事です。)

 

平成26年3月期より事業が急速に回復しておりますが、これを企業成長とみなすのは少々危険そうです。というのはサンテックの業務内容は内線工事・電力工事が中心であり、これは建設需要に依存しているからです。所謂アベノミクスや東京オリンピックによる恩恵を受けているのであり、永続的な成長というよりもむしろ周期的な景気動向による売上及び利益の極大化ではないかと推認されます。とはいえ今期限りで売上が急落することや、近い将来電気が不要になる社会が来ることも到底考えられません。

 

したがってサンテックの事業評価をするにあたっては、中長期の収益平均値から価値評価するのが妥当ではないかと考えます。

期間平均値 売上高[百万円] 修正経常利益[百万円] 対売上税引き前利益率 事業価値[百万円]
過去3年 41,040 1,422 3.5% 8,532
過去5年 37,218 835 2.0% 5,008
過去10年 34,362 564 1.5% 3,385

 

事業価値を評価するにあたって、ここでは修正経常利益の6倍とします。税率を40%として税引き後利益の10倍、つまり割引率を10%として評価していること同値です。これは一般的なバリュエーションよりも保守的です。

サンテックの中期計画では今よりも高収益の目標としていますが、現段階では保守的に考えてリーマンショックの不景気も含めた過去10年平均を基本とし、過去3年の平均収益が続くことをベストシナリオと評価することにします。

したがって事業価値は34億円~85億円と評価します。

 

尚、投資家にとって大事なことは細かい数字まで正確に価値を算出することではなく、保守的に大まかに計算して割安であるかどうかを判断することです。

1円まで価格を計算するのが会計士の仕事であり、1割くらい割安だろうと計算するのが投資家の仕事です。

 

 

■③投資不動産の評価

次に、投資不動産ついて評価します。

投資不動産の簿価は42億円となっていますが、これが正しいかどうか検証します。

過去10年の収益のうち不動産に係る部分だけを抽出し、投資不動産の簿価と税引き前利回りをまとめます。

事業年度 不動産簿価[百万円] 税引き前賃貸利益[百万円] 税引き前利回り
H28.3 4,228 167 3.9%
H27.3 4,266 204 4.8%
H26.3 3,564 211 5.9%
H25.3 3,590 240 6.7%
H24.3 3,627 246 6.8%
H23.3 3,664 268 7.3%
H22.3 3,693 334 9.0%
H21.3 3,681 344 9.3%
H20.3 3,711 331 8.9%
H19.3 3,693 359 9.7%
平均値 3,772 270 7.2%

 

平成27年3月期に5.4億円の投資不動産の取得があります。これが何の不動産を取得したのかまたは既存不動産に改修などがあったのかはわかりかねますが、いずれにせよ収益率は低下しています。

しかしながら過去10年平均の税引き前利回りが7.2%あることから、投資不動産の簿価が現実と大きく離れているとも考えづらいので、ここでは簿価通りに42億円と評価します。

 

■企業価値の検証

現時点におけるサンテックの価値は、

 

企業価値

=金融資産 + 事業価値 + 投資不動産 - 総負債

=265億円 + 34~85億円 + 42億円 - 130億円

=211~ 262億円

 

発行済み株式数は2000万株、そのうち自己株式364,106株を含むため、1株当たりの価値(株式価値)は企業価値を実質株数19,635,894株で割ります。

 

1株当たりの価値(株式価値)

=211~ 262億円 ÷(2000万株-364,106株)

=211~ 262億円 ÷19,635,894株

=1,075~1,334円

 

1株当たりの価値は1,075~1,334円と評価します。

現在の株価は608円であるため、株式価値は株価の+77~119%であるといえます。

 

1株当たりの現金清算価値と株価を比較し、投資不動産、事業価値を加えてそれぞれ株価と比べます。

 

1株当たりの価値分析

・株価 608円

・現金清算価値 688円 (対株価 +13%)

・投資不動産も含めた価値 901円 (対株価 +48%)

・事業価値を含めた価値 1,075~1,334円 (対株価 +77~119%)

 

少なくとも今手元にある金融資産で全負債を返済しても株価以上の価値(+13%)が残り、不動産の価値も加えると+48%、事業価値も加えると+77~119%となります。

仮に全く事業に利益が生じなくなったとしても、今投資することは+48%の投資収益が期待できます。

 

現在のあまりにも割安な株価水準においては、莫大な純資産によって投資元本は守られ、高い投資収益が期待できるだけでなく、元本の安全性が非常に高いことは明らかです。

 

■近年の積極的な株主還元

 

さらにサンテックは近年株主還元にも積極的です。

 

直近1年以内に自己株式の取得及び償却、増配を行っており、株主還元も積極的であることからサンテック株への投資魅力を高めています。

 

平成28年5月31日 225,500株(136,427,500円、1.13%)の自己株式取得

平成28年3月31日 3,805,000株(発行済み株式の15.98%)の自己株式償却

平成28年3月16日 191,200株(117,017,700円、0.80%)の自己株式取得

平成28年3月1日 151,800株(82,960,300円、0.64%)の自己株式取得

平成27年12月21日 200,000株(111,000,000円、0.84%)の自己株式取得

平成27年5月18日 189,000株(97,335,000円、0.79%)の自己株式取得

平成27年3月19日 861,000株(439,110,000円、3.62%)の自己株式取得

 

配当推移

平成28年3月期 1株につき24円(+4円)

平成27年3月期 1株につき20円(+5円)

平成26年3月期 1株につき15円(+5円)

平成25年3月期 1株につき10円

平成24年3月期 1株につき10円

 

純資産価値(PBR:1倍)以下の価格で自己株式を取得すると、1株当たりの純資産価値は上昇し、1株当たりの純利益も上昇します。この効果は買い付けした時点に効力が発生するため、発行会社のみが行うことができる市場を活用した最も合理的かつ効果的な価値創造であるといえます。

 

また、平成28年3月31日に発表した第11次中期経営計画によると、ROE向上を目指すとともに、配当・自己株式取得を通じて株主還元率100%を目指すとしています。

1960table4

加えて、成長を支えるガバナンスの確保として、政策保有株式の見直しも計画に含まれています。

1960table5

この点は非常に重要です。サンテックは以下の株式を長期的取引の維持を目的として政策保有株式を32億円有しています。

1960table6

そもそも政策保有株式に意味などあるのでしょうか。過半数を持つ親会社や、関連会社とみなせるほどの大株主でもない限り、相手方の株式をほんの少数持っているだけで長期的取引に影響を与えるとは到底考えられません。業績への影響は皆無でしょう。

不要な市場リスクをとる必要はなく、上記の銘柄に投資するよりも確実に価値を生むことができるのはサンテック自身の自己株への投資です。即刻全株式を売却し、その資金で自己株式への投資を行うことで株主価値を向上させるべきです。

中期計画が予定通り遂行されることを期待します。

 

■株式評価と期待投資収益まとめ

 

株式評価と期待投資収益をまとめると、以下のようになります。

 

平成28年8月7日現在

1960 サンテック

株価:608円

時価総額:121.6億円

株式価値:1,075~1,334円

期待投資収益:+77%~119%

投資判断:Buy

 

買い推奨のポイント

・時価総額を大きく上回る純資産

・直近3年は好業績、来期も好業績予想

・積極的な自己株式買い付け、増配

・中期事業計画において政策保有株式の売却意向あり

・中期事業計画において株主還元率100%目標

 

上述した通り、様々な要因からサンテック株への投資は魅力的であると考えます。

 

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